夏の入り口に見た
ゴールデンシャワー
今年も、ナイスキラキラ!
今度は少し小さいサイズがいいかな
アクリルでいってみようと
筆を動かしてみたけど
なかなか心が動かなくて
うーん、糸口はどこだ?
何がほしい?
キラキラか?
キラキラが目立つ
濃い緑か?
・・・
こうして着地がわからなくなると
しばらく、じーーーーーっと見る
見る
見る
少し目を離すために
部屋の中を歩いたりベランダに出る
視界に入ったら
またじーーーーーっと見る
絵を見ている時間
札幌にいた短大時代を思い出す
その時、わたしは
学生美術全道展に向けて絵を描いていて
縦1m30cm×横1m62cmの
100号という大きなサイズで
教室の壁に立てかけ
4、5m離れたところに体育座りで
そういえば椅子に座ってた記憶がない
全道展に出品する油彩の学生は
わたしともう一人だけ
制作期間が夏休みということもあり
その時はほかに誰もいなくて
描いていた約一か月
広い空間でひとりで描ける
携帯を持つのは10年も後だし
音楽もかけず、気になるものも遮るものもなく
静かで
あの場面を思い出すたびに
なんて贅沢な時間だったんだろう、と思う
長い時には8時間は教室にいて
そのほとんどは絵を見る時間で
思いつくとちょちょちょと描いて
また離れて、絵を見る
描いていたのは二条市場の一角にある鮮魚店
佐伯祐三の影響をバリバリ受けた
真正面からお店をクローズアップした構成
イイ味出してる古い建物を
ペインティングナイフでガシガシと
所狭しと並べられた海産物もガシガシと
先生に
市場なのに人は入れないのか、と言われた
ごつごつした塊が体の中にごろんとあるだけで
うまく言えなくて
黙ってあいまいに頷いただけだった
市場の賑わいを描きたいわけではなかった
老舗の店を、正面から、描きたかった
今なら言えるのに
気になるところを
少しずつ少しずつ埋めて、出品した
鮮魚店は入選となり
たくさんの作品とともに展示された
優秀賞などの受賞作品はさすがに力があるもので
わたしの作品はヒラだったけど
やりきった感があったので
展示されているのを見て誇らしかった
展示も終わり搬出の作業をしていると
受付の人がやってきて名前を呼ばれた
四つにたたまれた白い紙を差し出して
展示中に来場者から預かったと言った
開いてみると、わたしの名前と
将来が楽しみです、と書いてあった
どこの誰かもわからない人に、何かが届いた
体中がお祭り騒ぎになる、初めての体感だった
いつかそういう未来が来るように
その紙はお守りとなった
それから数年経ったころ
絵も写真も思うように続けられなくなって
お守りよりも
お守りを裏切ったような気持ちを
後生大事に持っていた
そんなことも忘れるくらい
もう何周目かわからないくらいまわって
結局、描き始めてしまった
その人に見つけてもらうことはないだろうし
その人が思い描いた将来ではないかもしれないけど
ゴールデンシャワーのナイスキラキラを
アホみたいに考える
わたしが楽しめるその将来に
やっと来たんだな、と気づいた