ホワイト&ホワイト

1997年 アメリカを渡る旅  フィラデルフィア


フィラデルフィアはとてもよい感じ

バスがダウンタウンに入っていくと
街が賑わっていて公園も多く
トロリーカー、ネイルや美容室、カフェなどなど
おお、なんだか楽しそう

YHもすぐに見つかり、ベッドを確保
ビジターセンターで地図をもらい
美術館を目指してバス停へ向かうと
バスが来る

なんてスムーズなんだ
フィラデルフィア


それほど期待、というか、知識もなかった
フィラデルフィア美術館
しまった、ここはいいぞ・・・

印象派のコレクション
セザンヌの大水浴、ゴッホのひまわり
見たことのない作品が多かった

誰の何、というよりは雰囲気のある絵が多い

ほかにも
スティーグリッツの写真、日本の茶室もあって
銀食器のコレクションがすごい
特別展でロダンとミケランジェロという
なかなか面白いものをやっていた

係員も良い人ばかりで
合間にちょこちょこ話したりできた

ゆっくり観られたので
もう一か所と思ったが
今日はここまでとする


YHの部屋に戻ると
ホワイト&ホワイト(歯磨き粉)をきっかけに話した
日本人の女の子を誘ってBAR行った

奈良出身の22歳の彼女は
これからワシントンD.C.で4カ月留学をするそう
その後、サンフランシスコでも
学校に入るんだそうだ

ポテトをつまみに
お互いの状況や旅の話を聞きつ、聞かれつ

近くのJAZZクラブを覗いてみようと
BARを出て、歩きだす

道に張り出したテラス席では若者はもちろん
大人たちもビールなんか飲みながら
楽しそうに過ごしている
風が心地よく、英語がBGMみたいだ

クラブは半地下で、階段を降りていくと
中からズンズンとボーカルが聞こえる
チャージを払って中に入り
カウンターの端に席を見つける

ピアノ、ベース、ドラムに黒人女性のシンガー
体をひねりながら音楽を聴く
かっこいい

バーテンダーの女性は
親切にビールの種類を教えてくれた
カウンターで飲んでいるカップル
ホールの席では食事をしている人もいるし
新聞を読んでるおじさんもいる
思い切って入ったけど
もう少し大人向きだったかな~と思いつつ

YHの門限が近くなったので
2回目のステージの途中で店をでる
久しぶりに音楽を聴いたし
風がまたまた心地よい


YHに戻ると
コモンルームで男性が書き物をしていた
わたしたちが話しながら入っていくと顔をあげたので
声をかけると日本人で
ニューヨークで語学学校に通っていて
こちらに遊びに来たそうだ

明日、ボストンへ行く彼女は部屋に戻り
わたしは彼としばらく話す

なんでも過去に
東南アジアを1年旅していたという
そしてこの後はヨーロッパに行くという

話の流れで、わたしが明日
バーンズ・コレクションへ行くことを話し
どんなに貴重であるかを思わず力説してしまう
彼も興味を持ったようなので
気が向いたら一緒に行きましょう
それではおやすみなさいと
部屋に戻って、眠った



やってきたバスにカネダさんと乗り込む

20分近く高速に乗るので
とても遠くに来た感じがするが
この辺はフィラデルフィアのベッドタウンのようだ
カレッジがあり、大きなスーパーや
ファストフードが並んでいる

バスがひっそりとした道に入ったところで
ドライバーがここだと言って降りると
なんだか夢のようなところだった

家は大きくはないが、かわいらしい造り
それぞれの庭には花が咲いている
水撒きのホースを持った女性が
近所の人なのか、こちらも女性と
立ち話をしている
二人とも上品な格好をしている

道路標示がわかりづらいので
水撒き女性に聞こうと近づくと
「バーンズの場所?」と逆に聞かれ
一本向うの道だと教えてくれた

すれ違うファミリーはきちんと正装していて
男性は小さい帽子を頭に付けている
何だろうかと思いつつ歩いていくと
素晴らしい並木道にでた

見えてきたのは“館”といった雰囲気の建物
周りを黒い鉄柵で囲んで
内側には大きな木が並んでいる
合間に見える芝生も輝かしい


バーンズ・コレクションを初めて知ったのは
1994年に東京に来た展覧会

実業家で美術研究者でもあったバーンズ氏が
収集した個人のコレクションで
まだ印象派の評価が低かったアメリカで
収集を始めた氏は批判を浴びることも多く
遺言により非公開で門外不出となった

もし、コレクションが世に出ていれば
美術の教科書の内容も変わっていたに違いない
と、言われたほどだ

3年前、この建物改修の資金集めとして
東京、ロンドン、パリの3ヵ所だけで展覧会が行われた

東京の西洋美術館へ観に行ったけれど
とにもかくにも、ものすごい来場者で
作品の鑑賞というよりは、目撃に近かった
それでも、見たことのない作品ばかりで
興奮したのをよく覚えている



カネダさんとは
2時間後に待ち合わせをして
それぞれ鑑賞する

最初の部屋に入った時に
あぁ!こういうことか!と思った

大量の作品を20の部屋に分けて
一部屋に対する作品量が多いのだけど
作品の傾向を、時代を考えて
同じ大きさの絵が左右対称に配列されている



贅沢にも壁一面、二段にも三段にも
ルノワールが掛けてある
印象派の嵐

ゴッホの楕円型キャンバスの裸婦
セザンヌ、スーラ、モネ
加えて、クレー、マティス、ピカソ、ブラック
アメリカの画家ホーレス・ピピンも2、3作品ある
作品一つ一つに風格というか
いちいち素晴らしい


量と密度がすごいけど
観てまわるのにちょうどよい
これだから個人宅って好きだ
疲れすぎず良い感じで観てまわる

途中で会ったカネダさんは
思っていたより良かったらしく
もうしばらく見ていくという

わたしは2時間半ほどで表に出て
庭の方へまわる

庭もとても広くて花畑のようだ
温室もある公園のようだ

夢みたいだ


ダウンタウンに戻り
お腹が空いたのでチャイナタウンへ
餅家に入って食べたことのない種類をチャレンジ
三角形で春巻きを揚げたようなものを買う
ひき肉を炒めたものが入っていて
とても美味しい


YHに戻ると
カネダさんがコモンルームにいたので
ただいまーと言うと
遅かったねぇと言われる

カネダさんは
わたしのわりとすぐ後に出て
ブラブラして戻ったのだそうだ

そのまま座込んで
デリで買ったサラダパックを食べながら
いろんな話をした

気づけば、5、6時間も

カネダさんは
この旅の後は仕事に戻るという

なんでも中国関係の本を
大学に卸しているんだそうで
それがなかなか楽しいらしい

もうこのような長期の旅はしない、と言う
言い切れるんですか?、と聞くと
うん、と、きっぱりだ

うらやましさ、少し


それでは
明日の朝は会えないかもしれないので、と
アドレスを交換し
おやすみと言って、部屋に戻った


長い一日だった


5月〇日
美術館 $4.00
おひる $4.60
食費 $13.00
切手 $5.20
YH(2泊分) $34.00
合計 $60.80

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こちらは、1997年の旅のお話です
場所や配置、状況などなど
現在とはおお~きく異なりますので
ご了承ください
当時の雰囲気をお楽しみください!
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絵を描いて写真を撮り、文章にして、まわりのモノ・コトを描き留めます。