なんだってこんなに旨いんだろう

1997年 アメリカを渡る旅  ワシントンD.C.


黒い柵越しに
白いホワイトハウスがちらりと見える
木々が覆っていてまともに見えない

観光案内所で市内地図をもらい
ホワイトハウスに背を向けて
ワシントン記念塔まで行ってみる

キング牧師はここで
「I have a dream」をやったのだ

小高い丘に立つ記念塔の周りを
ぐるりと囲むように国旗が風になびいている

塔に向かって丘に登ると
右手の視界がパーッと開け
プールのような人工池が長く伸びて
はるか先にリンカーン記念堂が見える

こころがすーっとする感じで
しばらく眺めた

塔から記念堂に向かい
ブラブラしながら歩くがけっこう遠い
建物まで来るとお土産屋が並んで
たくさんの観光客でにぎわっている

急で滑りやすい階段を上ると
おおき~いリンカーンが椅子に座っていた
高さは10mくらいあるかな
(ないです、5.8mです from 2023)

うーん!
これが見たかったのさ


今朝6時過ぎにニューヨークに入って
エンパイアステートビルが見えて
ロサンジェルスを出てやっと対岸に来た、
横断したんだ、と思うと
それだけで達成感があった

浸る間もなく
ワシントンD.C.行きのバスに乗り継いだ


振り返るとさっきのワシントン記念塔が見える
汗ばんでいるので日陰の風が気持ちいい



ワシントンD.C.はミュージアムだらけなので
3泊して観られるだけ見る

美術系では、ナショナルギャラリー
印象派が充実しているようで楽しみにしていた
モネ、マネ、ゴッホのいつものメンバーに
今回はレンブラントのポートレイトの迫力
ゴーギャンの風景画が筆の跡がリアルでよかった
特別展でピカソの青年時代をやっていて
十代のデッサンは相変わらず素晴らしいし
青の時代の、青の調子が様々で、天才


フィリップコレクション
アメリカの個人コレクションの中でも
質が高いとのこと、印象派も多い
個人宅2軒分をスカイウォークで繋げた建物
床も絨毯だったりして落ち着いた雰囲気が良い
ゴッホはアルルの公園など、4点
ルノワールも大きな作品があり
見応えがあった

アメリカに来て
特に多いと思うのは、ドラクロワとドガ
好きなのかな、アメリカ人

さすが金持ちの家らしく
ミュージックホールなるものがある
椅子も、装飾が美しく”チェア”な感じ
これだから昔の金持ちの家は好き

チェアに座り
ルノワールやゴッホを眺めていると
心がなんとなく豊かになるのだから
わたしって簡単



興味があって行ってみたかった、FBI
見学ツアーは20人ほどの団体に1人ガイドが付く
ドラッグや注射器、犯人のデスマスク!などなど
展示の説明を聞きながら見ていく

途中、ガラス窓の向こうで
顕微鏡をのぞいている職員がいて
DNA鑑定をしているところで
ホントにお仕事真っ最中だった

ラストは職員による実弾での発射実演
ガラスの向こうに
クリント・イーストウッドばりの男性が現れ
短銃を持って説明後
人型の紙を的に、ダンダンと撃つ
マシンガンも、ドドドドドーっと撃ち放つ
おおーーーとどよめく見学者
ひととおり撃ち終わったイーストウッドは
ガラスの部屋から出てくると
見学者の拍手に迎えられる

わたしには入る余地がない質問タイムを終え
我々は解放された

「ホロコースト(記念博物館)は早めに並んだ方がいいよ」

アドバイス通りに早めに出たが
到着したのは開館30分前ですでに100人は並んでいる
しぶとく待って10:30の整理券をもらえた

ナチス・ドイツによるユダヤ人大量虐殺をテーマに
さまざまなものが展示されている

ミニシアターや新聞フィルム
強制収容所の縦じまのユニフォーム
ユダヤ人を押し込めて運んだ荷車は
中を通れるようになっており
とても生々しい

ひととおり見終わると
すっかり疲れてしまった

アンネ・フランクの家を思い出した

95年のヨーロッパの旅の前年に
『アンネの日記 完全版』が出版された
なにかタイミングのような気がして
これを読んで
アムステルダムのアンネの家を見学した

当時の家具らしいものは本棚のドアくらいで
他はすべて撤去され
何もない状態だった

何もないのに
本を読んだばかりだったのでとてもリアルで
アンネの動線が拾えた
なんとも言えない気持ちになった

その後に行ったミュンヘンで
近郊のダッハウに強制収容所跡があるのを知り
見学に行った

収容所の一室に三段ベッドが並んでいて
段と段とのあいだがとても狭くて
身体を這わせないと入れない
寝返りも打てない

そこで唐突に
アンネの家を思い出した

匂いが

アンネの家と同じ匂いがした

とても静かな、衝撃で

だから

このホロコースト博物館に入るとき
もしかしたらまた
あの匂いがするかもしれない
と、身構えたのだけど
それはなかった



外に出て、お腹が空いたので
屋台でベーグルを買って食べた

ベーグルってそのままでも美味しいけど
クリームチーズを塗ると
なんだってこんなに旨いんだろうと
感心しながら食べる

ユニオンステーションのフードコートや
YH近くのスーパーに通ったりしたけど
なんだかベーグルばかり、食べていたような



3泊したYHはとても大きく、部屋も広い
14人部屋なのでこれだけ多ければ気を遣わない
4~8人部屋が一番、疲れる

夕時のダイニングで
席をご一緒させてもらった
日本人の女性ふたりがいた

はじめの晩は軽くお話して
次の日は玄米茶やスパゲティをいただきながら
ゆっくり話した

アメリカに在住ということで
住んでいる人のお話って感じで、面白く聞く
昨日は肌に合わないかなとも思ったが
とてもよい人たち
一晩ではわからないってことか

最後の晩もおふたりがいたので
図々しくお邪魔する
今日、行ったところから始まって
軽い人生論のようなことまで
いろんな話をした

おひとりはなんでも24歳の時にこちらに来て
これまでいろいろなことがあったけど頑張ってきて
今は納得してアメリカで暮らしている

わたしの状況などを話すと
がんばりなさい、あなたなら大丈夫よ
と言ってくれて
とても心強く感じた


わたしのベッドは窓のすぐ前で
予想はしていたが明け方は寒い

何度か目が覚め、もぞっと動いていると
斜め上の子が寒いの?というので
うん、寒い、と答えると
自分はもう起きるからと言って
毛布を掛けてくれた
優しい人よ


8時発のフィラデルフィア行きに乗る
キッチンでパッキングして
チェックアウトしようとすると
あのおふたりがいた
気をつけてと言い合い、YHを出た

やっぱり寒い
めちゃくちゃいい天気だけど


5月〇日
美術館(2) $7.50
ベーグル、ビスケット $1.75
りんご、ベーグル $2.36
合計 $11.61

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こちらは、1997年の旅のお話です
場所や配置、状況などなど
現在とはおお~きく異なりますので
ご了承ください
当時の雰囲気をお楽しみください!
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絵を描いて写真を撮り、文章にして、まわりのモノ・コトを描き留めます。