摂氏で何度だっけ

1997年 アメリカを渡る旅
グランドキャニオン→フラッグスタッフ


昨日と同じように5:30に起きて
朝日を見にヤバパイポイントに行く
歩いても行けるけど
3kmあるのでシャトルバスに乗る

部屋を出るとさすがグランドキャニオン
人々はもう散歩してる


朝のキャニオンは、青い


今日は寒いなーと腕をぎゅと組む
バスのドライバーは昨日と同じおばさん
グッモーニン!と乗り込むと
おはよう!今日は寒いわね!と言う
ホントホントと頷く

ヤバパイポイントにはすでに何人かいて
さらに突き出たポイントに立つ
ああーーとキャニオンを、
日が昇るのを、眺める

影の部分の深い青
日が当たるところはオレンジから赤の色の層
谷の間の空間にさえ
色がついているように見える

”空間”では言い足りない
視界に入るだけの世界、世界という言葉とも違う
谷も空間も空も雲も
”キャニオン”というもの、のような気がする

昨日は結局、一日中
崖っぷちにいた

午前中はブライトエンジェルトレイルという
谷底へ向かう道を少し下ってみたり
午後はヤバパイポイントまで歩いた

崖っぷちの細い散歩道をぶらぶらと歩き
好きなところで立ち止まっては、眺め
なんとなく座り、また歩く


全然、飽きない


とても印象的なところがあった

少し黄色がかった平らな岩が床のようで
突き出ている天然展望台というか
岩肌も滑らかでとても素敵なところだ



この先っぽに座ると
裂け目が開けていくようにみえて
素晴らしい眺め

風が
谷底で巻いて、鳴っているのが聞こえた

”吹く”のではなく、鳴っている
ゴォォ・・ゴォォ・・、と


夕陽はポイントに向かうシャトルバスに乗り
たくさん人が降りるところで降りてみた

キャニオンは青みを帯び始めていて
谷あいにコロラド川が見えた
降りていけば、けっこうな川幅のはず

夕景で色が濃くなるキャニオンの中に
水面の反射で光った川が、流れまで見えた


今朝もヤバパイポイントで
ひとりになれるのをじいっと待つ
その瞬間が来てダダっとシャッターを押し
また座ってしばらく眺める

去るのがつらい
よし、と自分に声をかけて立ち上がる
もう一度、よし、と言って、歩く

今日は10時のバスでFlagstaffに戻ると決めていた

部屋に戻って朝食を済ませてチェックアウト
バスの時間まで
崖っぷちに座って眺めて過ごす

とにかく去りがたい

ここから去るなんて信じられない!
とかなんとか思っているうちに
キャニオンは逃げない、と気づいた

ありがとうございます
また来ます



バスに乗るといつの間にか寝ていたらしく
気づいたらFlagstaffだった

このあいだ見当をつけたホステルで
ベッドを確保し、荷物を預けて表に出る

部屋には17時にならないと入れない
疲れてる・・あと5時間もある・・と思いつつ
明日のバス時間を確認しようと
グレイハウンドのバスディーポに向かう

今日はお祭りなのか街がにぎわっていて
アナウンスも華々しくバンド演奏も聞こえる


ディーポの入り口の階段に
日本人らしき男性がいたので
こんにちはーと声をかけると
びっくりしつつもこんにちはと返してくれた

東京から来た27歳のバイクのメカニックだそう
アメリカ入国時、所持金が$1,000だけだったので
LAで2カ月働いて、つい数日前にでてきたらしい

なんだ、タイミング一緒じゃん


彼は去年
インドとネパールへ行ったそうで
猿岩石に会ったらしい・・
などなど、旅のいろんな話を聞いた

旅のハプニングを心から楽しんでいるようで
「ビクビクしてちゃ面白さも半減する」の言葉に
ドキッとした

そ~だよね~

わたしはいつのまにか
この旅を無事に終わらせることばかり考えていた
せっかくアメリカにいるのに!


グランドキャニオンへ向かう彼を見送り
カフェに入って
ハウスコーヒーとベーグルを食べながら
ハガキを書いた

街は変わらずお祭り騒ぎで若い人が多い
バンダナを探すが、あまりない


ようやく17時になりホステルへ戻る
ロスもキャニオンも個室だったので
久しぶりのドミトリー
あぁ、懐かしのドミトリー
今日は6人部屋

部屋に入るとすでに人がいて
ハーイと声がした
名乗りあってヨロシクね、今日はお祭りなの?!
・・なんかの話をして、お互い荷物整理に移る


とにかく疲れていて
夕食も出る気になれない
持っていたオレンジとパンを食べて
ごろごろしながら本を読む

部屋は、ひとり、またひとりと増え
年配の女性が登場

彼女と話したが
明日からモニュメントバレーなんかを
ぐるりと回るらしい

わたしは明日フェニックスへ行くと言ったら
とっても暑いわよ、90℉だったもの!

ホント?!

とは言ったけど、摂氏で何度だっけ



5月〇日
ホステル $14
食費 $4
合計 $18





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こちらは、1997年の旅のお話です
場所や配置、状況などなど
現在とはおお~きく異なりますので
ご了承ください
当時の雰囲気をお楽しみください!
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絵を描いて写真を撮り、文章にして、まわりのモノ・コトを描き留めます。