まくらはふたつ!!

1997年 アメリカを渡る旅 GRAND CANYON



ロスから乗ったバスは山を越え
街に着き
乗客を乗せる

座席の一番前に座ったわたしの隣には
途中乗車のネイティブアメリカンと思われるおばさん

子供や孫?たちに見送られて乗ってきた
なんでもオクラホマへ帰るらしい
アメリカど真ん中
二日はかかるよね・・おつかれさまです


日が暮れてあっという間に夜になる
何事もなく翌朝7時には Flagsfaffに着くだろう
しかしそれは甘かった

夜中の1時過ぎに目を覚ますと
そこらじゅうトラックの大群で
たくさんのヘッドライトが辺りを照らしている
ものすごい風が吹いていて、砂もついていて
このトラックは砂嵐で前に進めないようだった


ドライバーがいない
となりのおばさんの独り言のような説明によると
どうやら電話しに行ったらしい

戻ったドライバーのアナウンスは
ラスベガスへ行くと言っている
理由は聞き取れないが
たぶん迂回するのだろう
わたしが心配してもなにもならないので
寝た



つぎに目が覚めると
お城のような建物がライトアップされている中を
バスが走っている
ボーっと見ているとバスディーポに着いた

すごく眠いままふらふらと外に出る
ここに来ることがあったら
泊まろうと思っていたホテルが
目と鼻の先にある

あきらめたはずのベガスにこんな形で来るとは!
あそべないじゃーん!

1時間後、バスは再び走り出した
Kingmanを経由してFlagstaffへ向かうとのこと


うとうとしている中、陽の光で目が覚めると
景色は岩場だらけの谷間
キャニオンの端っこなのかな
バスは下ったり、上ったりしている

陽に当たるも、影になるのも
すべてが美しく見える

いや、美しい

目を細めて見ていると
ドライバーが日よけを下ろしてくれた

ドライバーはラスベガスで交代した
若いアフリカンアメリカンで
トークも上手らしく
アナウンスのたびに笑い声が上がる
わたしにはわからないけど
話し方によどみがなく
音楽のように話す



バスがコロラド川を越え、Kingmanまでくると
やっとルートに戻りドライバーも交代した
この時点で4時間の遅れ

岩と山の景色の中に緑が少し増えてきた
平地に入ると丈の短い草が
一面に広がるようになってきた


グランドキャニオンは面積で言うと
東京都の2倍あるらしい・・
コロラド川で南北に
ノースリム(北壁)、サウスリム(南壁)と分けられていて
今回はサウスリムに向かうため
起点となるFlagstaffへ向かい、さらに
シャトルバスに乗り換える

昼の12時前、やっとこFlagstaffに着く
チケットカウンターで
シャトルバスのチケットを買おうとしたが
ここから出発するのではない、とのこと
会社が違うのか・・

シャトルバスのターミナルの場所を聞いたものの
何度も人に聞きながら、なんとか到着
次は、14:30発

カウンターにリュックを預けて、外に出る
Flagstaffは小さな町だけど
ホテルやロッジがたくさんあり
グランドキャニオンのゲートタウンと言った感じだ

またこの街に戻る予定なので
ホステルの確認をしたい
ビジターセンターでホステルの場所を聞くと
素敵な口ひげスタッフが指を4本立てて
この街には4つあるんですよ!と、スマイル
ふふふとなってこっちまで、スマイル

聞いた通りに歩いてホステルを確認してから
店が立ち並ぶ方へぶらぶらする

インディアンをモチーフにしたお土産屋さんがとても多い
ポストカードやネックレス、ブレスレッドに指輪
バンダナを買おうと思ったが
メキシコで買えば安いし本格的かなと思い、やめる

何枚あったっていいのに!


バスが来たので乗り込む
乗客はわたしとおじさんの二人だけ
バスのドライバーは真っ赤なジャケットを着ている
「ものまね王座決定戦」の司会者のような

所要時間は2時間
うとうと1時間しても、あと1時間

しばらくは、まっすぐな道の両側に
青々とした木がきれいに並んだ森の中を走った
視界が開けて、木の高さが低くなり
見渡す限りの土地

いったいどこまで走れば着くのだろうと思う


終点の一つ前でおじさんが降りた
えー、わたしだけ~?と思いながら
 Grand Canyon National Parkの入口へ

バスが一旦止まり
スタッフらしき女性が乗り込んで
ドライバーに今日は少ないのねと言っている
ドライバーも笑いながら返事をする

女性に新聞のような入園者用のガイドをもらい
読んでいると
ドライバーが自分のバッグを探り
紙を取り出してわたしに差し出した
みるとグランドキャニオン内で行われる
ツアーの割引券
ありがとう


終点は
ブライトエンジェルロッジという宿泊施設
山小屋のような外観で部屋数も多く
公園内で一番安い部屋がある
そのままレセプションへ向かう

ロスの宿のみんなが
日本はGWに入っているから混んでいるだの
料金が高いのを覚悟しろだのいうので
部屋が取れるか、それだけが心配

今晩の、できるだけ安い部屋を

と言うと、あっけなく取れた
$100までは出すぞ!と
気合を入れていたが、$46だった


君の部屋は・・
スタッフが屋外に出るゲートを指さした
トンネルの出口みたいだ
そこを出て
左に曲がった別棟とのことだった

見ると人が集まっている気配がした
表のロビーといったところかな

キーをもらって外に出ると
ぱっと明るくなって

はっとした



そこはもう展望台だった

見るか見ないかのうちに
泣いていて

ぼろっ、ぼろっ、と涙が落ちて
顔がぐしゃぐしゃになって

もういっそ、思い切り泣きたいけど
周りに人がいて
声をおさえるのが精一杯

考えることも何もさせてくれず
涙が止まらずどんどん、落ちる

腕で顔を拭くけど
フリースのジャケットがはじくので
うまく拭き取れない




しばらくして我に返って
とにかく荷物を置いてこよう

あれはなんだったんだろう

思い出すとまた
泣きそうになって困った



部屋はシャワーは共同だけど
トイレは付いているきれいな部屋

ベッドはきれいにベッドメイクされていて
洗面台にはタオルが山ほど!
せっけん、コップもある
もしやと思い、机の引き出しを覗くと
レターセットがある!
ラッキー
いつ泊まる宿では望めないものがここに!


荷物をといて、外に出た
公園内の見どころポイントを走る
無料のシャトルバスに乗って一回りしてみた

郵便局、スーパーマーケット、銀行
ガソリンスタンド、ビジターセンター
ここは小さな町だ

夜になる前にスーパーで食料を買い
夕陽のポイントとなる展望台へ行こうと思ったが
時間帯を逃してしまったらしい
あきらめて部屋に戻る

パンとチーズとフルーツの夕食を済ませ
いろいろこまごましていたら
あっというまに22時
移動、移動、明日の夜明けは5時半
寝ることにする


久しぶりのふかふかベッドだ

まくらはふたつ!!


5月〇日
食費 $10.68
キーホルダー $6.28
切手 $2.50
ロッジ $46
合計 $65.46




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こちらは1997年の旅のお話です
場所や配置、状況などなど
現在とはおお~きく異なりますので
ご了承ください
当時の雰囲気をお楽しみください!
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絵を描いて写真を撮り、文章にして、まわりのモノ・コトを描き留めます。