バルセロナのピカソ美術館で
降参しました
9歳のときに描いたデッサンが
すでに出来上がっていて
でも知ってるのはあの
ボーダー長袖の目力じいちゃん
ピカソってほんとに天才なんだ
デフォルメが激しいし、顔の分割が激しいし
構図の重石がどこにあるのかわからないけど
天才とか巨匠とか言われてるピカソ
全然、わからないんだけど
この美術館の所蔵は主に
9歳から「青の時代(20代前後)」の作品
分割もしてないし、何色にも染められていない
見たものを手の動きを通じて
紙に落とすって
もうそれはそれはの鍛錬が必要だと思うのに
線も面も、鍛錬の後の話
表現力を手に入れるごとに自由になって
色と出会ってカタチを試みて
手を止めずに進んでいくと
あのじいちゃんに、なるのか・・?
マドリッドに会った『ゲルニカ』に
ぶわんっと衝撃砲を撃たれるわけだ
ピカソ、すごすぎるじいちゃん
サグラダ・ファミリアは途方もなく背が高くて
立ったまま見上げると首がもうムリー!という
内部をひととおり見学したあと
裏庭にまわり
芝生にごろんとあおむけで寝転がると
ようやく頂点が視界におさまった
周りにも寝転がっている人がいる
その一人と目が合い
全部見えるね、と笑いあった
ほんと、途方もない
なんとなくわたしも途方に暮れる
立てた旅の計画の最終地点は
だいたいこのあたり、バルセロナでした
資金はまだあり
続けようと思えばもうしばらく旅を続けられる
じゃぁ、どこへ?
イタリアはフィレンツェ止まりで
ローマ、ナポリにも行ってみたかった
ギリシャに行ってみるのもいい
いやいやここまで来たらエジプト
ピラミッドはやっぱり見てみたい
旅の途中で出会った
親の年にも近い日本人のご夫婦は
若いときは遠くから行っておくのがいいよ、と
言っていた
行くならエジプトか
ピラミッドか
グエル公園は本当にヒトが作ったものか
はたまた異世界への
パラレルワールドへの
入り口か
ガウディの作ったものは大きい
建築家だから大きいのは当たり前だけど
ヒトを相手にしてないような
視界におさまらない大きさ
見るには距離が必要なのに
触りたくなる
手のひらでなでたくなる
あたらしい土地や文化
いろいろ候補地を挙げてみるものの
イマイチ気分が盛り上がらない
見たかったものは見られた達成感
旅に疲れてしまったか
理由もいろいろ挙げてみる
いまなら、これはもう潮時ねと
さくっと引き上げるでしょうけど
この旅で得がたい経験をしたわたしは
まだなにかあるのでは
今度はいつ、来ることができるのか
名残惜しくて捨てきれない
アフリカに行ってもギリシャに行っても
それだけの気持ちがあれば
どこへ行ってもよかった
けれどこの時の旅はもう終わっていて
なによりそれを
認めたくなかったんでしょう
宿の近くの公園までもどり、ベンチに座る
考えを整理したくてノートに書いていく
音がしてそちらをみると
あひるが池からひょこっと上がった
まさか?と思うわたしに向かってきて
靴をつんつん、つつく
食べ物、ですよね~
でも持ってないんだよ~
と言いながらシャッターを押す
つつかれたブーツは
半年の間、この一足で歩いていたので
ボロボロで、もう穴が開きそうだ
もういいか
ここでぐずぐず考えていても
「帰る機会」を逃してしまいそうだ
次の機会がいつなのか
その機会が来るのかも、わからない
帰ろう
とたんにこころが軽くなった
そうだ、パリに戻って
美術館をもう一巡りして、帰ろう
だんだん楽しくなってきた
帰ったら写真集をつくろう
できるかどうかわからないけど
とりあえずやってみよう
うん、帰ろう
ちょっとだけ
アフリカへ向かう鼻息荒いあなたを
見たいような気もするけど
帰ろう
楽しかったね、とっても
それにまた
飛行機に乗るんだけどね
言わないけど!