シンディ(仮名)が叫んだ

1995年 ヨーロッパを巡る旅 スペイン編



アンダルシアに来ています。

この世に土地と空しかないんじゃないか、という

風景です。


私を乗せたバスは 小さな丘にさからうことなく

くねくねと続く道を行きます。


他になにもありません。


なにもありませんが なんだか とても


救われたような思いです。

スペイン・ロンダより




ロンダのバスターミナルについて
観光案内所へ向かう

明るい

太陽のせいもあるけれど
照りつけるようなまぶしさではなく
土地が明るい、と言いましょうか


Hi, さっきのバスで一緒だったね

観光案内所で地図をもらって
街の概要と宿の位置確認をしていたら
ブロンドでショートカットの女性に声を掛けられた
彼女の背中にも大きな赤いバックパック

宿はどうするの?

あぁ・・
わたしのガイドブックに載っているところに
行ってみようかなと思って
これくらいの金額らしいよ

へぇ、一緒に行ってみてもいい?

うん、いいよ

シンディだったか、キャシーだったか
Cからはじまるイギリス女子
宿は特に問題なく、それぞれシングルを取り
一緒に街をまわることにした


北海道より少しい大きいアンダルシア州
どこをどう行こうが構わないからこそ、悩む
次のポイント、グラナダまでのルート選択

シェリー酒の産地である
ヘレス・デ・ラ・フロンテーラをとおり
ジブラルタルまでいけばアフリカはすぐそこだ
行っちゃう?アフリカ?
糸の切れた凧になる可能性が、我ながら怖い

または
世界遺産のメスキータ(モスク)や
街並みの美しさで人気のコルドバで
少しゆっくりして、グラナダへ向かうコース

だがしかし、選んだのは
断崖絶壁の上に建つ街・ロンダ
だいぶ渋いチョイス


街は、川で北部と南部に分かれている
川は土地を削りに削って、峡谷クラス
南北をつなぐ橋の高さが、なんと98mもあり
渓谷上にある街の景観が
ウリのひとつというわけです

シンディ(仮名)とてくてく歩いて
まずは橋へ向かう

土産屋もある観光地なので
ラフな格好の観光客がそれなりに歩いている

立ち並ぶ建物の壁は白く
窓枠や扉のようなポイントが
ベージュや深い臙脂のような茶系で塗られている

アンダルシアといえば、白い村、白い壁
そうそう、この風景も見たかった


視界が開けて橋に着く

片側は、渓谷が急に終わり
遠くの遠くまでつづくひろーい土地
さらにその向こうには連なる山影が見える

もう一方は、少しずつ低くはなるものの
ほとんど同じ高さで白い建物が続いている

橋から渓谷を見下ろすと
おおっ!
おぉぉ~~~!
足もすくむことを忘れる高さ


I’m buzzing!!
シンディが叫んだ


えっええ、ばじんって、いうの?

そう、happy! amazing!とかもっと
もう!すごい!exciting! な、時に言う

へぇ~、I’m buzzing!

そうそう! buzzing!!


わたしもシンディも
目的はこの景観を体感することのみだったので
後はホントにダラダラと

眺めがよい場所を見つけては座って
あっちに行ってみようかと街歩き
その流れで夕飯も
レストランに一緒に行ったっけ

もう、何を話したのか全く覚えてないけど
景色を眺めながら、話しても、話さなくても
一緒にいるのが自然な人だった


翌日
先に発つシンディを見送った
行先はジブラルタルだったかなぁ

わたしはバスの時間まで絵葉書を書いた


バスに乗ってロンダに来るときに通ってきたのは
この道、ホントに幹線なのかなと思うほど
そりゃぁもう、な、田舎道で

土地の起伏にさからうことなく、丘を迂回するので
曲がりくねっているのだけど
それをまた丁寧に、バスがゆくのです

いえ、バスは
ただ道を走っているだけなのですが

道をまっすぐ引くなんてことはしない
まがってまがって、この丘越えて、あの丘へ

そんな風景を窓から眺めていたら
なんだかじわぁっとしたものが


昨日、橋から景色をみていたら
その感覚がよみがえって、それから
ある先輩が浮かんだのでした

その女性は
おもしろおかしく話してくれるようでいて
彼女の在り方を見せてくれるような
それを本当の気持ちで話してくれるひとで

これまで散々話を聞いてもらっていたけど
なにか伝えたことって、あったかな


先輩、アンダルシアに来ています。


絵を描いて写真を撮り、文章にして、まわりのモノ・コトを描き留めます。