進みも戻りもしない

細氷, 345×253, 水彩紙, 水彩絵具




先日の帰省した北海道

その日は法事を控えていて
あちこちから親戚が集まるという、朝

顔を洗って何気なく窓を見ると
窓霜(まどしも)が


窓の向こうは
数軒の家を挟んで堤防、その奥には畑
さらにその先は工業地帯で
大ぶりな建物が並んでいる

一瞬、雲のように見えるけれど
工場から排出された水蒸気が
外気に冷やされた白煙
建物周りで地を這うように流れていく


これは冷えましたね


家族が
今朝はマイナス19℃だったと言っていた

急いで支度し
ちょっと写真を撮ってくると言って
外に出る



玄関先はうっすら積もった雪で真っ白だけど
よく見るとキラキラしている


いつもの堤防を目指す


歩くたびにキュッキュッと雪が鳴る
寒さで粒子が細かい

音が軽い


空気にさらされた顔の皮膚が
ひんやり固められていく

動け!動け!
動いていないと
その場にわたしの氷像ができそうだ



堤防に上がると空が広がった
ぐるり360度

青が七割、白三割

さっき見た白煙が
工場の前をゆっくりと移動している


視界にチラチラ、キラキラするのは
細氷
ダイヤモンドダスト

雪は降っていないけど
風で舞った粉雪が
金に、黄に、赤、青、緑で
瞬きながら漂う


見とれている余裕もない

夢中でスマホのシャッターを押すも
あっという間にバッテリーが無くなった

撮りたいものは撮れたし
体のバッテリーも切れそうなので
あきらめて帰ることにする




そういえば去年も寒かった

旅を終えようとしている人を
ベッドのそばで見守るだけで
わたしは進みも戻りもしない

ふわふわした頭で病院の外にでたら
外気の冷たさに身体がぎゅっと反応した


しっかりしろ、と
言われているようで




これから
ゆかりある人たちが集まる

黒支度ではあるけれど、今日は
お元気でしたか、と笑顔で尋ねるのだ





絵を描いて写真を撮り、文章にして、まわりのモノ・コトを描き留めます。