背中のタンクからチューっとでる

1997年 サンフランシスコでのひとコマ

そうそう、ホテルの部屋で
朝のテレビ中継を見ていた

コーヒーの売出しか
背中のタンクからチューっとでるコーヒーを
道行く人にサービスしている
レポーターはミルクを注ぎ
インタビューしていた

日記をぴらぴらめくると
少しずつ記憶が蘇る

このころからあったのね、スターバックス!

それにしても
なぜこの場面を描きとめたのか、





ヨーロッパのお話をしてきた流れで
次はアメリカ・・と思ったけれど
この旅の印象が薄い

とても薄い


しょっぱなからロスで風邪をひいた
グランドキャニオンで号泣した
メンフィスのライブ、それからナイアガラの滝
フィラデルフィアの美術たち
ニューヨークのミュージカル
なんとなく楽しかった
サンフランシスコ

あっという間に終わるかも・・という時に
帰省のタイミングとなった


実家、それは昔の自分と出会ってしまう
オソろしいトコロ


家の片づけをしていると
あぁ、・・・コレね
はいはい、アレね

あんなこと~こんなこと~
あったぁでしょぉぉぉ~の中から
アメリカ旅行の日記が出てきた

おお!
そうそう、君がいたじゃないか!

ぴらぴらめくると字がいっぱい!
ヨーロッパの時よりも
かなり細かく記録している

そのかわり、写真もスケッチも
ずっと少ない


いや、それにしてもコレ・・
細かすぎて逆にもう、ちょせない
(いじれない)

だったらそのまま載せてしまえ!

というわけで
25年前の話なのに
やけにリアルなお話となりました



見つけた日記をめくりだしたらもう終わり
座り込んでしばらく読み返す

日記の中のわたしの温度は、低い

こんなに記録しているのに
なにかのフィルター越しに見ているよう
思い出して少しちくちくする


ヨーロッパから戻ったわたしは
小さな写真集を作り
手売りしたり、書店においてもらったり
たくさん、助けてもらって
たくさんの気持ちに触れながら
それは思いのほかに売れた

まわりの人はわたしに聴く
次は何を?

そう、わたしも考えていた


次は、何を


そう思いながら
森に入ってみたり
街に出かけてみたりしたけど

自分の中から湧きあがるものは何もなく
その瞬間を切り撮ることしかできない


ヨーロッパはドタバタだった
すべてが初めてで、すべてが新鮮で
悔しくても、嬉しくても泣いて
自分の全部を使うような旅で
その眼をとおして写真を撮った

そう、あの時のような


自分を奮い起こしたくて
ぼんやりと浮かんだアメリカの旅を実現させる


それでもわたしの温度は上がらなかった

ひとつにそれは、二度目の旅で
経験によって、どんなトラブルがあり
どう回避したらいいのかがわかる
ロスに着いたわたしは日記に
できることが増えている、と書いている

断然スムーズに
いろんなことをできるようになったけれど
裏を返せば、旅の新鮮味はない

「初めて」は、一度しかないのだ

もうひとつに
足りないものに目を向けて
今が見えなくなっていた

「アメリカ横断」は初めてなのに!


帰国しても温度が上がらないまま
わたしは写真を撮らなくなった



時間が経つごとに薄くなっていた旅を
まさか25年後になぞるとは!

西部のドライヤーターボの風の中
東へ向かうほどに潤っていく植物、
バスディーポから宿に向かう道、
たしかにポテトは多かった!

からだの奥で歯ぎしりするように
それしかできない!記録をしながら
無事にロスからニューヨークまで横断した

写真もしばらく撮らなかったけど
終わったわけではない、とわかるのは
10年後なのだ


あの旅は全然薄くない



いつかアメリカ横断、できたらいいな
妄想元はアレです

『アメリカ横断ウルトラクイズ』

ニューヨークへ行きたいか~!
おお~っ!

ウルトラハットをかぶって
赤いボタンを押したかった




当時のわたしに伝えたい

忘れてるみたいだけど
アメリカ横断の夢、叶ってるよ!

なんかいろいろ考えてるみたいだから
ウルトラハット作って
持っていけばよかったね!




すっごい、怒られそう




絵を描いて写真を撮り、文章にして、まわりのモノ・コトを描き留めます。