肘が上がってるんですかね

用事を済ませ、
さぁ、今日は外で飲みますよ!
頭のなかに、ぐうぐる先生の
地図を起こそうとしたとき、
気になっていたお店が現れた。

店前に品書きがあり
さらっと読み流すつもりが、
一品一品、名前からの味の妄想・・
なかなか目を離せず足が動かない。

動かないなら入りなさい、わたし。
ですよね、わたし。

ではお邪魔します。

開店まもなくの時間帯、
カウンターには
常連と思われるお客がひとり、
店員とちょこちょこ話しながら
飲んでいる。
二つ空けた席に案内された。
よい兆候。

生ビールが体幹を刺激したら
お通しのこんにゃくをお供に
お品書き、拝見。
ホタテの昆布〆、ですってよ?

普段は、冷や常温で飲むけれど
北風ぴーぷー時期になると、
温めた日本酒が飲みたくなる。

「お風呂に入ったみたいに温まる」
以前、席が隣り合った女性が
熱燗を飲みながらそう言っていた。

うまいこと言うなぁ。

冷えで手足が
ガチゴチなら熱燗で、
カチコチならぬる燗で、ひと口。
体の奥の方からじわ~と温まる。

心身ほぐれたところで、
炙った青魚もほぐして口に含む。
ひと口目より熱さも緩んだ酒で
魚の油分も溶けて、

うまいなぁ。

あったかいなぁ。



「武士みたいに飲むよな」

わたしが酒を飲む姿を見て
店主が面白そうに
にやにやしながらそう言った。

ぶし?

一回や二回ではない。
ずいぶん楽しそうに言うから
悪い気はしないのだけど
こころあたりがなさすぎて、
「そう?」と、またひと口飲む。
どのあたりが?を聞くことも
思いつかなかった。

つい先日、友人と飲んでいるときに
ふと思い出して話したら、
「飲む時、肘が上がってるんですかね」
はぁーっ!なるほど!
わたしを真正面からみると、
器を持つ腕のラインが
つぶれ気味の「く」の字ってことか。


その店はポテサラやアジフライのような
居酒屋のど定番モノから、
内地から寄せた旬の魚介を
ちょちょいっとうまぁく仕立て
お手頃に食べさせてくれた。

きゅうりの漬物をカリカリしながら
次の肴を考えていると、
隣から「食べきれないから」と
小皿がすすっとさし出されたりする。

並ぶお客はだいたい常連なので
ネタは最近のニュースや身の周りのこと、
いつも大中小のわいわいが行きかう気安い店で
その中を泳ぐように切り盛りする
店主が一番、楽しそうだった。


ちょっと、ちょっと!
器を持つとき肘をあげるから、
武士っぽいの?

絶対、わたし見ながら
頭にちょんまげ乗っけた妄想、
してたでしょう?
一緒に刀も
見えたんでしょうよ!

当たってるなら
今度飲む酒、
あからさまに旨くしてよ。

やっぱりそうかー!って
わかるくらいにね。

絵を描いて写真を撮り、文章にして、まわりのモノ・コトを描き留めます。