マフィンは甘いしでかいし重いし

1997年 アメリカを渡る旅  メンフィス



午前9時を過ぎて、さてと立ち上がる
ディーポを出て、インフォメーションへ
両替のできる銀行を教えてもらう

着いた銀行は高層ビルで
案内板を見てもさっぱりわからない
May I help you?と声を掛けられ
両替したいのだというと
それなら9Fよ、と教えてもらう
インフォメーションのおばちゃんといい
教えてくれた女性といい
とても親切
気取りがなくて気持ちよい

9Fに行くと
International exchangeの札を見つける
先客は日本人男性、40代くらいだろうか
わたしたちはさらに
1Fでキャッシュに替えてもらう

男性と少し話したところ
ツーリストで、メンフィスは3日目とのこと
わたしは先ほど着き、また夜行に乗る
情報は観光名所のビール通りくらいだというと
キング牧師が暗殺された場所がMuseumになってるから
行ってみるといいと言って
行き方を教えてもらう
そのほか二、三、会話して
では気を付けてと別れる

うーん、大人は
別れ際も気持ちがいいものだ


夜行で疲れていたが
テンションが上がっているようなので
さっそくCivil Right Museumに行くことにする


メンフィスには旧ストリートだったところに
トロリーカーが走っているけど
地図をみると歩いていけそうなので
歩くことにする

1ブロック、2ブロックすすむごとに
人が少なくなっていく
小さいグロッサリーはあるが住宅街に入ったようだ
クローズしている店のペンキ塗りをしている人に
Museumの場所を尋ねると近くらしい
まわりの建物は古く、レンガも崩れ
空き家かと思うとAPERTと書かれていて
親子らしき人が出てきた
人が住んでいるらしく、びっくりした

Museumはそんな住宅街に
ポンと置かれたような近代的な建物だった
$5払ってホールに入る


入ってすぐのところに
黒人たちの作ったパッチワークの展示があった
黒い壁のようなモニュメントもある

しばらく眺めていると係員に誘われ
小さいフィルムホールに入る
ちょうど始まるところだった
フィルムホールには1/3ほど人が入っていて
白人が多い

「I have a dream・・」
キング牧師の有名な演説からはじまる
黒人が虐げられてきた歴史を映したものだった

アメリカの歴史や人種差別について
本で何冊か読んできたものが、
本の中にあった写真が、
突然フィルムとなって動いている
少しショック

フィルムが終わり明るくなると
泣いている白人のおばあちゃんがいた
どんな理由で泣いているのかわからないけど
この人はリアルタイムで見てきただろうか

順路に従い、展示物を見ていく
年代ごとに当時の新聞の切り抜き、証言フィルム、
実際に使われていた生活品や
黒人が殴られている写真は生々しい
実際に座ることができる
バスボイゴットのバスの展示
座込みのカフェのカウンター
キング牧師が入っていた独房
奥さんとtelでやり取りした会話が記されている
一角にはマルコムX、選挙権について
本当にたくさん集めて
ありとあらゆる物で、角度で、展示している

こんなMuseumがあると思っていなかった
本当に来られてよかったと
つくづく思ってしまった


ミシシッピ川が見たいなと思い
適当に歩いていたら
急に視界が開けて川沿いの大きな公園に来た
わぁーー!となって
川沿いまで行って腰を下ろす
買っておいたオレンジを食べる

風が気持ちよい

朝は寒くてどうなることかと思ったが
太陽が出てとっても気持ちが良い
川はキラキラと輝いていてとってもきれいだ

親子がやってきて目が合ったのであいさつ
なんだかとっても気持ちがいい


スーパーでブラブラしながら
マフィンは甘いしでかいし重いし
などと考えていたら

わぁ・・こんにちは

と、声を掛けられる
銀行で会った男性だった

キング牧師のところ、行きましたよ
あぁ、良かったでしょ?
えぇ、本で読んだのがそのままで

せっかく会ったのだからという雰囲気のまま
話ながらスーパーを出る
わたしはなんとなく
また会えないかなーと思っていたので
あぁ、会えたと思ったが
男性、Yさんはとても驚いていたらしく
こういうことってないよ~と言っていた
わたしの自己紹介のような話をした後
ビール、ご馳走しようか、と言われ
思い切りハイと答える

Yさんはカルフォルニアにお兄さんがいるらしく
一緒に新しい仕事をはじめようと
脱サラしてこちらに来た
その前に2か月ほどアメリカをまわることにして
音楽が好きで、自身でもギターを弾くので
メンフィスにブルースを聴きに来たとのこと

今日もライヴハウスに行くんですか?と聞くと
そうだ、ということで・・
わたしは8時のバスに乗るつもりだったが
11時にもバスがあるのを思い出した

これはニューオーリンズのリベンジではないか?!

バスの時間をずらして
ライヴについていってもいいでしょうか
それはいいけど、無理しない方がいいよ
いえ!夜に出かけるなんてめったにできないし
ライヴに行ってみたかったんです!
・・・ということで決定

時間をつぶしながらあちこち歩く中
ゆっくり落ちていく夕陽が
まんまるで大きくてオレンジで
本当にきれいだった


ビール通りに戻ると
そろそろライヴがはじまっているらしく
YさんおすすめのB.B.Kingのお店に入る
チャージは$5
手の甲にスタンプされる

店内は広く、ステージを囲むようにテーブル席
正面奥にカウンター席、2階席もある
わたしたちはカウンターに座り
バドワイザーを飲む
ビールは瓶のまま、周りもみんなラッパ飲み
客の入りは9割ほど

バンド構成はピアノ、ギター、ベース、ドラム
トランペット、トロンボーン
それぞれソロを織り交ぜた2、3曲の後
ボーカルの黒人女性が現れる
かなりの太っちょさんだが
年季の入ったふるまい、客の扱いも慣れている
そして歌もめちゃめちゃうまい!
バンドもすごくかっこいい!

Yさんも、彼女うまいねー!と
叫ぶように言っていた
音がすごくて耳元で叫ばないと聞こえない
カッコイイですねー!とわたしも叫ぶ


はじめのステージが終わり
ポテトフライとコールスローをつまみながら
いや~、かっこいいですね~などと話す

繋ぎで3人の男の子が出てきて
バク転なんかをやりだす
客がおひねりを投げる
札をくしゃくしゃに丸めて

次のステージではギター以外が入れ替わり
ラフな格好の若めのお兄さんたちになる
サルサだ

俺らはプロだから1曲演らしてくれというと
けっこう演らしてくれるんだよ
でも、サルサなんて珍しいねーと、Yさん

へーと思いながら聴いているとさすがにうまい
コンガみたいなのが入ってサックスも入る
リズミカルでとてもよく
踊り出す人もチラホラいる…のだが
バンドが客をあおるがあまり乗らない
やっぱみんなブルース聞きに来てるからかな

最後にさきほどのメンバーと
ボーカルの彼女が出てきて
またかっこいい曲を2曲ほど聞いて
バスの時間になったので外に出る
夜風も程よく気持ちがいい

Yさんも出てきて
バスディーポまで送ってくれ
荷物はみているからトイレとか行っておくといい
と言ってくれたので
チケットチェックやトイレを済ませる

東京に来ることがあったら
いいクラブに連れて行くよーと
連絡先を交換し
それじゃ風邪引かないようにと言って
去っていった、Yさん

いい人だった…
メンフィスに寄ってよかったなぁ


シカゴ行きのバスに乗り込むと
今日はとなりに誰も座らなかった

ラッキ。



5月〇日
ブルース $10
食費 $6.18
ロッカー $4
トロリー・バス $2.25
King $5
Museum $1
はがき $5.63
風邪薬 $5.40
合計 $39.46


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こちらは、1997年の旅のお話です
場所や配置、状況などなど
現在とはおお~きく異なりますので
ご了承ください
当時の雰囲気をお楽しみください!
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絵を描いて写真を撮り、文章にして、まわりのモノ・コトを描き留めます。