キラキラがぜんぜん足りない

 

すごい、どうしよう

なんか、すごかった

どうしよう

なんとかあの光景を

とにかく描いておこう

1995年 ヨーロッパを巡る旅・北部編




とても人気があるので、
とにかく販売時間より早めに行って並ぶこと。

『地球の歩き方』先輩はさらに、
立見席は当時換算で200円だとおっしゃる。

うそでしょ?


バレエについては全く知識がなかったのだけど
当時、札幌でお世話になっていた方が
「娘がロンドンにいるから泊めてもらいなさい」
会ったことのないお嬢さんのお部屋に?

訪ねてみると少し年下の女性が
気持ちよく迎えてくれた。
初対面にもかかわらず意気投合し、
ワインとチーズで夜な夜な語り合った。
彼女はバレエ留学していたのです。

その後にフランクフルトで会った人も
バレエダンサーだった。
あなたもか!と思ったその人は
とても素敵な人だった。
そんなに会う?
ステキバレエダンサーに。
じわじわくる、バレエの波。


『歩き方』先輩の仰せのとおり
ウィーン国立歌劇場裏手にまわると、
確かに人の列があり、みな腰をおろしている。
最後尾につき、
いつものぼんやりを始めようとしたとき
前の人が振り向いて「あ、日本人?」と言った。

まさか、前の人も日本人だなんて。
少し年上のその女性は、
以前、某劇団に所属していたのだけど
声楽の勉強のためこちらに来ているという。

ウィーンは学ぶ環境として最高で、
例えば立見席もこの金額だったり
学ぶ者がいたるところで
本物に触れることができる、と。

たしかにわたしも、
素晴らしい美術館があるからやってきた。
加えてウィーンは、建物がいちいち素晴らしい。
え?市庁舎?うそでしょ?え?大学?ほんとに?
そこから出てくるのは
マリー(アントワネット)じゃないでとダメでしょレベル。
教会もやっぱりいちいち素晴らしく、
重厚なシュテファン寺院をはじめ
ヴォティーフ教会のステンドグラス、
ペーター教会は内部石材が白いせいか
ドーム内を光が柔らかく乱反射していて、
うっとりしながら思いました。

こちら、天国ってことでよいでしょうか?


この日の演目は『眠りの森の美女』であり、
マラーホフが出演するという。

「初めて観るバレエがマラーホフなんて、
すごいラッキーだよっ!」
彼女の目がキラキラしている。

知識不足のわたしの目は
キラキラがぜんぜん足りないが
チケットを無事入手し、
開場までの待ち時間にお仲間とのお茶に誘ってくれ、
入場のタイミングでも彼女の手腕により
立見でも最前列、しかも真ん中位置が確保された。
わたしのオペラ座デビュー。

なにがラッキーって、
あなたに出会ったことがラッキーだったと思います。


そうしてもらった初・バレエタイムは
あっという間だった。


素晴らしかった。

なんということだ。

ダンサーの身体からうまれる美しいライン。

オーケストラの音にのり、のせられ、

動きと音が共鳴して、踊りが際立つ。

すご・・
これが、芸術なのか


マラーホフのジャンプは
飛んだ瞬間、本当に時が止まったような、
その場面が、切り取られたような感じがしたのだ。
そしてゆっくり「とん」と、舞いおりる。
鳥肌が立った。

どうしよう

なんか、すごかった

バレエって、すごいんですね・・・。


戻った宿で
目撃した光景を脳内で繰り返し再生する。

なんとか描き残そうとするわたしの目が
ついにキラキラしたのでした。


絵を描いて写真を撮り、文章にして、まわりのモノ・コトを描き留めます。