まるで洗った気がしない

アパートからみえる向かいの建物

1995年 ヨーロッパを巡る旅・パリ滞在編



イギリスからイタリアまで
2か月で北部をぐるりと回ってパリに入り、
ひとまずサンジェルマンの安宿に部屋を取った。

共同のシャワー室が
鍵を借りて入る一人用なのだが、
とにかくいろんな仕切りがなさ過ぎて
持ってきた着替え、履いてきた靴の置き場がない、
タオルを掛けるフックスすら、ない。

何が濡れないでいられるの?!

叫びたいのを堪え、考える。
トータルの動作と何が必要かを考え、
工夫するけど
まるで洗った気がしない
なかなかひどい宿だった。

はやく

部屋を

見つけたい
(決意)


旅に出る前にざっくり立てた計画は、
2か月で北部を回り
2か月パリに滞在
2か月で南部を回る、というもの。

パリを2カ月にしたのは、
市内に美術館がたくさんあること、
移動が続いた体を休め、それにちょっと
「暮らす」ことをしてみたい。

夏のバカンス時期になると、休暇で出掛ける間
自宅や部屋を貸し出す人がいるので、
短期間でアパートが借りやすくなる。
そこを狙ってパリ滞在を夏にした。

アパートの情報収集は、現地に入って
観光案内所などで手に入る、日本語情報誌を確認。
日本人がオーナーの物件が多いのも、ありがたい。
『OVNI』は今、webサイトに!
その節は、大変お世話になりました。

でてるでてる、バカンス物件。
見当をつけて下見に出かけたのは、20区。
パリの地図でいうと
有名なランドマークのバスティーユ広場の右奥あたり
メトロの Gambetta 駅の近くにあるアパート。

駅地上に出て通りを見つけ、77番地を目指す。
76があって78があるのに、77は?。
あれれれれれ?

悩んで見渡すと
車道を挟んだ向かいに女性が立っている。
もしかしてオーナーかな?
近づくと名前を呼ばれた。
あ、はい、わたしです!

時間が過ぎていたので、
もしかして?と思ったらやっぱり(笑)

すみません、番地が見つけられなくて

そう、こんな風と思わないものね

こちらで番地は、通りの右側が偶数、
車道挟んで左側が奇数、のように表記される。
わたしは偶数側を歩きながら
77を探していたワケです。
ひー!

オーナーについて建物に入る。
うわぁ~、ヨーロッパぁ~!なんだけど、
牢屋感ある鉄格子エレベーターに乗せられ、
到着した最上階8階には、狭い通路に3つの扉。
左奥の部屋へ向かう。

扉を開けると、まず8畳ほどの部屋がある。
ベッドに寝具、14型くらいのテレビ、電話もある。
部屋に入って左後ろに振り返ると
1口の電気コンロがあるキッチン、その右手に
シャワーカーテンで仕切るバスルーム。
部屋の窓から少し遠いけど、中心部が見える。

これまでの旅で多少鍛えられたのか、
もう十分すぎる。
金額も予算より少し出るくらい。
この部屋、お借りします。


翌日には部屋に入り、まずは周辺散策。
まず驚いたのが
アパートから徒歩5分圏内に
パン屋が5軒あったこと。

まじか、パリ!
さすが、パリ!

そして、バゲットのうまいこと。
何が違うの?!
粉?!バター?!
全部か!!
さらに安く、当時、1本80円ほどだった。
あまりの旨さ、そして若いわたしは、
恵方巻のように1本するする食べていました。


バックパッカー時代、旅で食べた三大旨いものが
フランスのバゲット
イタリアのオリーブオイル(エキストラヴァージン)
台湾のお粥、でした。

今でこそ
日本にいて本場ものが食べられますけど
当時は、現地で知る味でした。
今はどうかな、と思い返してみると
ソーセージとかバターとかキッシュとか
美味しい嬉しいはいろいろあったのですが、
それでもこの3つと出会った時の衝撃と比べると
変更なし、です。

ん?
安・・い。

そう、アナタ、
高いもの、食べてないからね。
優しい気持ちになる 2022。



誰かの足音で起こされることもなく、
眠りに眠って目が覚めて、
なにを言っているかわからないTVを眺めながら
ビスケット2枚を
インスタントカフェオレに浸して食べる。

そんな風にスタートしたパリの2カ月は
たんたんと静かに流れつつも
ささやかなお話があるのですが
それはまた、次の機会に。



絵を描いて写真を撮り、文章にして、まわりのモノ・コトを描き留めます。